東京高等裁判所 昭和36年(行ナ)194号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無)
二 原告は、本件審決にはその主張の点に判断を誤つた違法がある旨主張するが、その主張は理由がないもものというほかはない。すなわち、
引用例には脱ガス室内へ石炭を装填する車における給炭装置が記載されていること、これと本件特許発明との相違点として、(一)本件特許発明においては各フードの上下動につき油圧シリンダーとピストン杆による駆動手段を用いているのに対し、引用例においては駆動手段が示されていないこと、および(二)本件特許発明においては内側フードの下部を内方に折り曲げて倒載頭円錘状部を設け送炭孔金物と面接触できる形状であるのに対し、引用例においてはホッパーKの下部にこれに応ずる部分がないことは、いずれも当事者間に争いがない。
よつて、まず右の相違点(一)について検討するに、<書証>によれば、石炭による瓦斯発生炉またはコークス炉の分野において油圧力、水圧力または空気圧力によつて作動されるピストン、これと連動する杆やその他の部材を介してその要部を駆動することは、本件特許の出願前周知の技術であること、ならびに、本件特許発明において、給炭装置における要部である内側および外側フードの上下動を、連杆レバーと連動する油圧シリンダーのピストン杆で行なうようにしたことに基づく原告主張の作用効果は、いずれも従来公知の技術を用いることにより予期しうる程度のものであることを認めうべく、これを左右するに足る証拠はないから、右の点は当業者が容易に選択実施できるものといわざるをえない。
つぎに、前記相違点(二)について検討するに、本件特許発明の出願公告公報ならびに弁論の全趣旨によれば、本件特許発明においては、給炭時に内側フード17は、その鍔18が棚16に乗り外側フード15とともにその下部の倒載頭円錐状部が送炭孔金物30の円錐状内壁に当接しながらその位置を前後左右に誘導されて、右内壁(「球面」とあるのは「円錐状」の誤記と認める。)に密接嵌合するまで下降し、その後外側フード15だけがその下端を炉頂に接するまで下降して送炭孔金物30を覆うというように、両フードは前後二段に操作され、その終了時すなわち給炭時には内側フードの鍔18と外側フードの棚板16との間には間隙が存するが、前記のように外側フードの下端が炉頂に接しているから、原告主張の(イ)、(ロ)および(ハ)の各作用効果<編注―本件特許発明は前記相違点(二)の機構により、(イ)コークス炉の送炭孔29の中心とシュート下部の筒体13の中心とに多少の狂いがあつても、両者を密接嵌合させること(センタリング)ができ、(ロ)この場合に両者は面接触するから、シュートから落下供給される石炭が(内側フードの)外部にこぼれることなく、かつ、(ハ)送炭孔から立ち昇る煙やガスが外側フード15の外部に洩れることがなく送炭孔附近の過熱を防ぐことができる>があることが認められ、引用例によれば、引用例のものにおいて、管f内にアングル突起mを有するホッパーKがアングルリングi上に側方に移動できるように遊びをもつてルーズに支承され、ホッパー下縁は装填孔枠金Oを落下供給される石炭より保護するように内壁に接触してこれを覆うごとく形成され(ホッパー下端の内径は装填孔の径よりやや小)、給炭時にはホッパー下端(ローラーを取り付けたものと取り付けないものがある。)が装填孔枠金の円錐状内壁に当接しながら前後左右に移動して下降するから、たとえ装填孔Pの中心と装填容器の下方の流出管bの中心とに狂いがあつても、流出管bは装填孔と同心的に位置され、その後管fだけその下部のアスベストリングが炉蓋hに接するまで下降し(給炭時ホッパーKのアングル突起mと管fのアングルリングiとの間に間隙が存在するように図示されている。)、したがつて、ホッパーおよび管の操作は前後二段に行なわれること、およびローラーのないものにおいては、給炭時にホッパー下縁が装填孔枠金の円錐状内壁に線接触により隙間なく密接して嵌合することは明らかであり、原告が本件特許発明の作用効果として主張する(イ)、(ロ)(ただし、面接触と線接触との相違はあるが、効果に格別の差異はない。)および(ハ)と同様の作用効果を有するものであることがそれぞれ認められるから、下部に内方に折り曲げて形成した倒截頭円錐状部を有する本件特許発明の内側フードと下周にローラーを有しない場合の引用例のホッパーとの構成上の差異は、作用効果のうえに格別の相違をもたらさないものであり、設計変更の域を出ないものといわざるをえない。
<中略>原告は、本件特許発明の要旨は、特許請求の範囲に一連不可分に記載した構成要件を結合したところにあると主張するが、本件特許発明がその構成要件である技術を結合したことにより特段の効果を生ずることを認めるに足る証拠はない。
したがつて、本件発明は、引用例および前記周知の技術から当業者が容易に発明しうる程度のものとみるを相当とする。
(むすび)
三 以上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法があるとして本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。
(三宅正雄 土肥原光圀 武居二郎)